赤ちゃんは、何度も何度も転んで、ようやく立ち上がる事ができるようになります。たまに苛立ってかんしゃくを起こしても、泣いても、決して諦めるというはありません。
私たち大人はどうでしょうか。
「どうせ無理だから」
と、最初から挑戦する事すら諦めていませんか?
今回は、そんな大人に贈る絵本「あの空を」(菊田まりこ・作)を紹介します。
■ 「あの空を」あらすじ
菊田まりこさんといえば、「いつでも会える」で一躍有名になった絵本作家さんです。どの作品も少々難しいテーマの絵本で、でも最後には気持ちが温かくなる、そんなストーリーばかりです。
「あの空を」の主人公は、ヒヨスケ。
ヒヨスケの夢は、あの空を自由に羽ばたく事。何度も何度も挑戦します。いつか飛べる、いつかあの空を、と夢見て何度も挑戦しますが、ちっとも上手く飛べません。
「飛びたい、という気持ちだけじゃ飛べないの?」
ヒヨスケは次第に悲しくなって、とうとう飛ぶのを諦めてしまいます。
「だって、頑張っても飛べないのなら、高く上手に自由に飛べないのなら、悲しいからもう飛ばない」。
でも、気づいたのです。本当に悲しいのは、あの空を諦めるという事だと。
今度こそ、次こそ。ヒヨスケの挑戦は、明日もまた続きます。
■ 「あの空を」の魅力
ヒヨスケのひたむきな努力をする姿と、心の葛藤に胸を打たれます。
また、菊田まりこさんは、筆ペンのような強弱のある線ですごく可愛らしいヒヨスケを描いています。ヒヨスケが、
「諦めないで、もう少し頑張ろうよ」
といったメッセージが聞こえてくるような絵本です。
現代は、努力する姿はカッコ悪い、初めてでもサラリとこなせる方がいい、という考えの人が多いそうです。
確かに、できなくて失敗する姿はみっともないかもしれません。やっぱりダメだったとき、笑われそうでそれが怖いのかもしれません。
でも、だからといって挑戦しないのは、その自分こそがカッコ悪い事ではないのでしょうか?
失敗して落ち込んで、でも諦めきれないで手にしたものは本当に嬉しいし誇らしい。
思い出してみて下さい。
初めて自転車に乗れた日の事。初めて逆上がりが上手くいって、世界がくるりと一周した日の事……。
それに挑戦していた自分は、カッコ悪かったでしょうか?
■ ヒヨスケは飛べたのか?
「あの空を」は、ヒヨスケがまた頑張ろうと思った所で終わります。
果たして、ヒヨスケは飛ぶ事ができるようになったのでしょうか。
私は、どちらでも良いのではないかな、と思います。夢だった大空を自由に飛べるようになったのかもしれない。もしかしたら、ヒヨスケは飛ぶ事ができない鳥で、願っても叶わない夢だったのかもしれない。
でも、だからといってヒヨスケの努力は無駄だったのでしょうか。
いいえ、きっと違うでしょう。無駄な努力なんてきっと無いはずです。ヒヨスケの夢が叶っても叶わなかったとしても、きっと得たものがある。そう信じたいです。
■ 贈り物にも
菊田まりこさんの「あの空を」を紹介しましたが、いかがでしたか?読むと、自分も頑張ろう、と奮い立たせてくれるような絵本です。落ち込んだときにページを開いたり、贈り物などにもいい絵本ですね。以上、「あの空を」の紹介でした。