今回は、西原理恵子さん作「いけちゃんとぼく」を紹介します。
「いけちゃんとぼく」の作者、西原理恵子さんは漫画家として多数の著書を発表してる人気漫画家です。その西原さんが初めて描いた絵本が、今回紹介する「いけちゃんとぼく」です。映画化もされたので読んだ事がある人も多いのではないでしょうか?
「いけちゃんとぼく」がなぜ多くの人の心に響くのか、あらすじと考察などを紹介します。
■ 「いけちゃんとぼく」のあらすじ
主人公、「ぼく」の周りには理不尽な事がいっぱいあります。毎日たたかれて、フクシューをして、ひとりぼっちで、お父さんが死んでしまって…。
でも、「いけちゃん」という、なんだか変な生き物が側にいるから、「ぼく」は元気に成長していきます。
「いけちゃん」はとってもおかしなな生き物。困るとちいさくなるし、怒ると丸くなる。変幻自在で、温かいとよくふくらむし、時々さみしそうな目で「ぼく」を見ています。
ストーリーはそんな「ぼく」の成長と、それを見守る「いけちゃん」を描いたものです。
物語の最後には、いけちゃんが何者なのかを語られるのですが、それがいけちゃんとぼくとのお別れの時でもあります。
■ 「いけちゃんとぼく」の魅力
西原理恵子さんの絵はとても独特で、初めて読むと、慣れるまで少し時間がかかるかもしれません。しかしその語り口は、マンガの表現とは全く違って、穏やかで詩的な文章がとても多い事に気づかされます。
「わすれないでね。すきだとかならず、かえってこられるの」
「男の子は走るのが急に早くなって、あっという間にどこかへ行っちゃうって。」
これらの台詞はいけちゃんのモノローグですが、もうこれはラブレターのような文章ではないですか。絵柄とのギャップがとても面白く、気づいたら西原ワールドにハマっている事間違いナシです。
■ 「いけちゃん」はどこに行ってしまったのか
「さよなら。私たち、とても短い恋をしたの」
いけちゃんの切ないお別れの言葉です。
「あなたといる時間がとても短かったから、あなたにもう一度会いたかったの。」
いけちゃんはそう言って、ぼくの目の前から姿を消しました。
その後もぼくの目の端に、いけちゃんの気配を感じますが、ぼくが大学生になって、女の子に恋をしたとき、いけちゃんはとうとう見えなくなってしまいました。
いけちゃんは、どこに行ってしまったのでしょうか。
作者の西原理恵子さんは、いけちゃんのモデルは、西原さん自身の子どものイマジナリーフレンド(子どもの時だけ見える、空想の友達)であったと語っています。
その事を考えると、いけちゃんは子どもの頃のぼくの目にしか見えず、大人になったその時、姿を消したと考えられます。
ただし、いけちゃんはイマジナリーフレンドといった存在ではなく、また未来で出会えるであろう人です。果たしてその時、「ぼく」はいけちゃんの事を覚えているのでしょうか。
■ 「いけちゃん」の正体は・・・
今回は「いけちゃん」の正体については具体的に指すのはやめました。ネットで調べたらすぐに分かる事ですが、いけちゃんの事を一番適切に表している言葉はやはりいけちゃん本人であり、それを表現した西原理恵子さんであるからだと思うのです。
ぜひ「いけちゃんとぼく」を読んでみて、いけちゃんが何者なのか、ご自身の目で確かめてみて下さい。
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以上、「大人にこそ読んでほしい!おすすめ大人向け絵本10選」をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
1冊でも心に響く絵本をご紹介できていたら、これ以上のよろこびはありません。
気になった絵本があったら、ぜひ書店で、図書館で実際に手に取ってみていただけたら幸いです。